読売新聞1月23日
 高齢化社会を迎え、医療・福祉分野に商機を見いだそうというベンチャー企業が増えている。
そんな中、夫婦がそれぞれ、異なる新規事業に挑戦しているユニークな会社を見つけた。  (三宅 隆政)

 2002年設立のメディサイト(大阪市中央区)は、松村眞吾さん、敦子さん夫婦が経営する開業医の支援会社だ。 近鉄不動産に勤務していた眞吾さんの転機は01年、同業のメディヴァ(東京)を経営する大石佳能子社長の講演を聞いたところだった。

  「患者の視点での医療改革」を唱える大石さんは、開業医を支援するコンサルタント会社の先駆者だ。 2000年末に医師と共同で設立した東京の診療所では、電子カルテによる患者への情報開示や、外部の複数の専門医と連携する診療体制など、斬新な試みを取り入れ、医療関係者から注目を浴びていた。

  自分の理想の医療を追求できる開業は、多くの医師の夢だ。 高齢化が進み、かかりつけ医を求める患者も増加している。だが、開業には最低でも5000万円程度の資金が必要で、病院同士の競争も激しい。 こうした背景から、「より良い診療に加え、患者集めや資金調達など、経営面での支援が欠かせなくなっている」(大石さん)という。

  「支援は惜しまない」という大石さんの言葉に勇気づけられ、眞吾さんは独立を果たした。これまでに、看護師らのやる気を引き出す人事評価 システムを手がけたほか、病院と一体で運営する介護施設の開設にもかかわった。今年中には、家族医を目指す若手医師と共同で東海地方に開業 医の育成機能も備えた先進的な診療所を設立する。

  「生き生きとした夫の姿に刺激され、自分でも事業を始めたくなりました」。
敦子さんは、自分の起業の経緯をこう振り返る。

  きっかけは03年、眞吾さんが会員だった患者支援団体が実施したアンケートだった。「おしゃれで機能的な患者用のパジャマが欲しい」という要望が多かったのだ。自分の両親が病気で入院した際も、不満に感じていた。

  中学校で家庭科を教えていた経験もあり、「自分で作ってみよう」と決意した。試作してみると好評で、パジャマの上から羽織るベストと、バンダナ風の帽子を女性向に商品化した。

  患者の声を聞いて作ったベストは、背中にカイロを入れられるポケットを設け、胸にはポケットを付けて透けないよう工夫した。 ゴムひもでウエストや肩幅を調節できるようにもした。

  おしゃれなバンダナ風の帽子は、抗がん剤などで髪の毛が少なくなった人のために作った。「かつらだと、高価で装着感も良くない」との気配りだ。

 口コミで評判が広まり、住友病院(大阪市北区)や国立病院機構大阪医療センター(大阪市中央区)など、大病院でも売られるようになった。

  事業に手ごたえを感じた敦子さんは「夫はライバル。早く軌道に乗せ、独立して別会社を起こしたい」と意気込む。 眞吾さんも「一緒に患者さんの役に立てれば」と笑う。夫婦の相乗効果は大きそうだ。)